「断熱性能」と「体感温度」
それのなにがいいの?
今回のスタートはここ。断熱性能が高いことって、何が良いの?そもそもの目的は「快適に、健康に暮らす場」を作ることなはず。家の断熱性能が高いことは、そのための手段の一つ。これを勘違いすると、「快適・健康」が遠ざかることさえあります。
健康・快適を考える時、例えば使いやすい間取りや、広く感じるような空間などなど、考えるべきポイントはたくさんありますが、今回はもっと根本的なところで、体感温度は何℃になるか?という点に注目しつつ、話を進めます。
体感温度、というとイメージされるのは、自分を取り巻く空気の温度です。室内の温度なら室温です。室温が20℃なら、そりゃあヒトは20℃と感じるだろう、というのが大方の見方ではないでしょうか。実際はちょっと違います。
冬の寒い日、大きな窓の前に行くとヒヤッとした冷たさを感じませんか?あのヒヤッに体感温度の秘密が潜んでいます。「体感温度」には、自分を取り巻く空気の温度に加えて、自分を取り巻く壁の温度が重要なんです。体感温度をちょっと荒っぽくまとめると、こんな図と式になります。
「自分を取り巻く空気」と「自分を取り巻く壁」の温度の平均が「体感温度」です。体感を決めるのが室温だけでないところがとても重要です。上記の例は、室温を20℃にしても、壁の表面温度が16℃だと体感温度は18℃になってしまう事を示しています。
そしてここからが本題。
この体感温度、「断熱性能」に左右されてしまいます。同じ室温の部屋を比べた時、高い断熱性能を持つ家に比べ、断熱性能の低い家は寒く感じてしまうんです。
「断熱性能」を示す指標はいくつかありますが、前回もちょこっと説明した「Q値」を使って、断熱するとはなんぞや?を説明しようと思います。
Q値は、内外温度差が1°Kのときに移動する熱量を延床面積で割ったものです。 したがって、小さければ小さいほど断熱性能が高いことになり、 大きければ大きいほど、熱がダダ漏れで断熱性能が低いことになります。
断熱性能の基準は、国が定めた基準と、有識者が集まって決めたものがあります。断熱等級1〜4が国の定めたもので、HEAT20という有識者が集まって作った団体が提示した基準が、HEAT20のG1、G2というグレードです。これらの基準値のとき、体感温度がどうなるか示します。
条件は、一年で一番寒かった日の翌日の朝、寝ている間は暖房を切って、起きる1時間前にエアコンで暖房して、起床した時の室温と壁の温度、そのときの体感温度をシミュレーションします。その結果が以下。#ちょっと大きい図ですが悪しからず
1時間エアコンで暖めて室温を同じ20℃にしても、断熱性能によって壁の温度の上がり方が異なっていて、その結果、体感温度に差がでています。断熱性能が低いと、壁の温度が低いですね。そりゃそうです。壁から熱が外に逃げ出しているので、いつになっても壁が冷たいままだから。「断熱性能が低い」→「冬、熱がたくさん外に逃げる」→「壁の温度が下がる」→「体感温度が下がる」、という連鎖になっているんです。
体感温度を上げようと思えば、エアコンを24時間稼働させ続けたり、設定温度を20℃ではなく24℃にあげて、壁の温度を上げたり室温を上げたりと、方法はいくらでもあります。ただしそれらは、ランニングコストを上げることに直結します。
現実的なランニングコストの範囲内で、例えば冬に健康的で寒くない環境を得るためには、断熱の性能を高めることが必須です。その結果、同じ室温でも暖かく感じるこでき、設定温度を低くできるので、ランニングコストも大きく削減できます。
普通に想像できる高断熱化の効果「逃げていく熱量が減ったぶん省エネ」に加え「室温を高くしなくてもいいから省エネ」が加わって、より省エネで快適に近づきます。
熱ゴロウ
コラボハウス一級建築士事務所