輻射冷暖房のウソ?ホント?

断熱気密

輻射式の冷暖房器、というものがあります。
こういう物です。

※PSグループWebサイトより転載
この写真は「PS」と呼ばれるもので、金属製のフィンに温水や冷水を通して、
輻射熱で暖めたり冷やしたりすることを目指した冷暖房機です。

なぜ突然「輻射冷暖房」の話題か?!というと、
実は、お問い合わせ頂いたから、です。

輻射冷暖房を導入された方が、家を建てて2年経過した今、
思っていたような快適な空間にはなっていないが何故?
とのことでした。

「輻射」は、熱の伝わり方としてはなかなか扱いが難しいモノです。
見えないビームでエネルギーを伝えるのが輻射なので、
ビームが届くところには効果がありますが、
ビームが届かないところには、輻射のエネルギーが届きません。

例えば上の図は、上部真ん中のオレンジが輻射暖房で、
そこから出る輻射熱を矢印で描いています。
部屋中に輻射熱が行き渡っている用に思えますが、
暖まっている人の影に隠れた人は、輻射熱を受けることができません。

次に、壁があると、その後ろには輻射熱は届きません。
ビームが妨げられたら、その先に輻射熱は到達しません。

さて、こんな輻射熱でどうやって家中を暖めるのでしょうか?

各部屋全てに輻射パネルを設置する、というのが正解だと思いますが、
そんなことしたら初期費用が高くて高くて、、、
誰が設置するでしょうか。

輻射パネルも、電気ストーブも、石油ストーブも、
まずは輻射で対象(人)を暖めます。
ですが、それは暖房器の周辺に居る場合のみ。
壁等を隔てて離れたところには、輻射熱は伝わりません。

さて、離れた物陰に熱を伝えるには、残る2つの伝熱手段、「伝導」「対流」の
どちらを使えばよいでしょうか?

「伝導」と答えたアナタ。知ってましたか?
空気自体はとても熱を伝えにくいことを。
対流しない空気、動かない空気は、断熱材と同じほど、熱を伝えにくいんです。

離れたところ(しかも物陰)まで熱を移動させようとしたとき、
一番利用出来るのが、「対流」です。
空気の動き、風を作ってしまえば、
その風のスピードで熱が伝わっていくんです。
これを利用しているのが、エアコンや、ファンヒーターです。

あたたか~い風が吹き出して、部屋中の空気を暖めてくれます。

輻射暖房器の表面から、周囲の空気に「伝導」によって熱が伝わり、
その空気が「対流」で移動していくと、
家のアチラコチラを快適にすることができます。

以上をまとめると、下の図になります。

「伝導」のみで熱を伝えようとすると、空気があまりにも熱を伝えにくいため、
成立しません。なので「×」

輻射は、熱源から人へビーム的なものとして直接伝わります。
ビームなので、途中で曲がったり寄り道したりしません。
とにかく真っ直ぐ。

対流は、暖房器の熱源から周辺の空気に「伝導」で熱が伝わり、
その空気が「対流」で移動し、
人の周辺にやってきて「伝導」で人に熱を伝えます。
空気さえ移動すればどこへでも熱を運べます。

ということで、
輻射冷暖房は、基本的には設置した部屋にのみ効果があります。
家中を快適にしようとすれば、パネルだらけの家にするか、
空気を循環する仕組みをつくるか、どちらかです。
単純に輻射パネルを設置するのではなく、
パネルで暖められた(冷やされた)周辺の空気を家中に循環させる仕組みが別途必要、
ということです。
輻射冷暖房といえど、輻射熱だけでは家中を快適にすることは難しいのです。

次回に続きます。


のゴロウ(高垣 吾朗)

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操作ミスで削除してしまったコメントと、それに対する高垣の返信を掲載いたします。

コメント

  1. 高垣 吾朗 より:

    操作ミスにより、こちらに頂いていたコメントを削除してしまいました。
    幸いスクリーンショットをとっていましたので、ブログ記事上に再掲しております。

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