いつを旨とすべきなのか?

住宅関係の人なら一度は聞いたことある?はず。
吉田兼好による徒然草の第55段。

  家の作りやうは、夏をむねとすべし。
  冬は、いかなる所にも住まる。
  暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。

  家は夏に住みやすいように作りなさい。
  冬なんてどうにでもなる。
  暑いときの作りが悪い家は、我慢ならない。

これ、真正面から信じて家づくりをしている人、結構多いです。
住宅業界に入って知りました。
だから、断熱の手を抜いたり、
高気密を悪と捉えたりするようです。

へーそうなんだ。
と思考を止めず、立ち止まって考えてみます。

吉田の兼好さんは、

・夏暑いのは嫌
・冬はどうにでもなる

と言っています。

日本は高温多湿で夏の不快感は、それはもうよく分かります。
逃げ場の無い不快感。
どこに行っても救われない感じ。
沖縄時代、特に一年目にはよく思いました。

寒ければ、服をたくさん着れば良い。
ちょっと体を動かせばいい。
寒さはどうにでもなる。
確かに、北海道に住んでいた時に思いました。

実感に沿う、妥当な意見と思えてきます。
夏を旨とすべし。
夏旨の家。
目指すべきは夏旨

今と昔。
大きく異なる点があります。
テクノロジーです。

殆どの家庭に設置してある「エアコン」

昔は冷やせなかったです。
でも、今は冷やせます。
室温を下げる手段を手に入れた今、

「暑いときの作りが悪い家は、我慢ならない。」

いえいえ。もう我慢なんてしなくていいんです。
暑い時期でも住みやすい環境は、今や作れます。

ではどうする?

冬を旨とするのか?
冬旨の家。

具体的には、
 1)断熱気密性能を高める
 2)日光を室内に取り込む
で実現します。

1)断熱気密性能を高める
断熱は、ちっとも難しくないです。
熱を通しにくい断熱材を厚く設えて、
高性能なサッシを使えばいいです。
木サッシや、樹脂サッシを使って、ガラスはトリプル。
断熱に関してはそれでいいです。それだけ。
材料の選び方だけで完成します。


あとは気密を確保できる作り方をすればよいです。
ここも、ノウハウさえあれば、どうにでもなります。
断熱気密性能を高めれば、冬、快適に過ごすことができます。
はいおしまい。
冬旨の家の出来上がりです。

ちょっとまった。
冬旨の家は、太陽の光を取り込むために軒や庇は無いでしょう、おそらく。
その家、夏になったらどうなります?

太陽の光をシッカリと取り込むので、室温が上がります。
夏暑いです。
断熱性能を高めているので、超暑いです。

冬旨にしたら、吉田の兼好さんが懸念した、夏暑くて困る家ができそうです。

昨今、住宅の快適性に注目が集まり始め、
断熱性能を高める方向になっています。
それは正しいと思っています。
夏旨の家から冬旨の家へ、意識の変革が起こりつつある今、
意識だけ変わってしまって知識が変わらない人が家づくりをするとどうなりますか?

なんの知識もなしに断熱性能だけを強化していくと、
一周して、夏暑くてやってられない家の完成です。

断熱を強化して冬快適になる家を作ると、
今度は、夏灼熱地獄。
再び、夏暑くないようにするための知恵や方法が必要となります。

夏の直射日光が室内に入るのを防ぐ軒・庇があり、
室内に溜まった熱気を効率よく排出するため風がよく通る家。

今の時代に必要なのは、これ。

高気密・高断熱という前提のもとに作られる夏旨の家

冬への配慮は高気密・高断熱でクリアできるので、
設計面で夏旨であると意識すれば、完成形に近づくはず!





このとき大切なのは、夏旨の設計をする力
カッコイイだけでなく、使いやすいだけでもなく、
高断熱・高気密の家を夏旨にする知識、手法。
これからはそれが大切です。

そのデザイン手法が「パッシブデザイン」だと思っています。

コラボハウス一級建築士事務所
高垣 吾朗

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